厳冬期 利尻南陵④

▲バットレス上部からS字状のルンゼを抜ける
1月6日(土)3:30起床。手早く朝食を済ませ、6:00、暗いうちからの行動開始とする。昨日張ったフィックスロープをたどりバットレスを抜ける。ほどなくS字状ルンゼに出る。ルンゼを抜けると南峰がすぐ目の前に迫っていた。このとき雲が切れ青空が覗く。南峰の頂に立つと日本とは思えないような絶景が眼前に広がっていた。南峰頂上からは岩を掘り出し一度の懸垂下降。本峰への登りは雪が吹き溜まり深いラッセルとなる。最後は少しだけ立った斜面を岩にアックスを効かせ登りきると本峰に到着。このとき12:00。
▲雲海に霞む仙法志陵
▲聳え立つ南峰
▲本峰への登り。晴れ間はここまで。

この日、午後から吹雪く予報は的中した。本峰から北峰への下りで完全なホワイトアウトとなる。コンパスを頼りに稜線を手探りで進み、北峰に到達。13:00。いったん握手を交わすも、ここからこの山行で最大のブリザードがはじまった。下から吹き上げる北風がサングラスもゴーグルもあっという間に凍てつかせまったく用をなさない。やむなく裸眼となって進むが、たちまちまつ毛が凍り前が見えなくなる。GPSで位置を確認しつつ、コンパスで長官山小屋方面を目指すが、地形が複雑で時折気が付くと足元が切れ落ちていて思うように進めない。「山は我々を殺す気か!」。やり場のない憤りを前進のエネルギーとして、コンパスの度数を合わせ20m事に進路を確認しジリジリと進む。16:00ようやく長官山小屋付近に到着。翌日は視界が無いことを前提にコンパスとGPSを頼りに夜半から行動することを決め眠りにつく。利尻はどうしても我々を簡単には帰そうとしないようだ。
▲ともあれほんの少し残ったウイスキーで乾杯

1月7日(日)。3:30行動開始。暗闇の中コンパスの度数を頼りに前進。時折GPSで位置確認し修正しつつ下降を続けた。6:30、標高700m付近まで降りると、遠く前方に街の明かりがきらめいて見えた。「ようやく帰れる」。この山行で最も歓喜した瞬間だった。8:00野営場、9:05鴛泊港に到着した。港に着くとともに午前便が出航していった。紙一重で間に合わなかったが、ゆっくりできると前向きに考え、港の食堂でかつ丼大盛を平らげてから利尻山温泉でゆっくり入浴。顔と手足の指が軽い凍傷にかかっていた。

17:30のフェリーで利尻を後にする。翌日の航空便で新千歳から仙台へ戻る予定のため、ここから長い運転が待っていた。疲労困憊だったがかわるがわる運転し帰路についた。

厳冬期利尻南陵③

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