厳冬期 利尻南陵②

2018年1月2日(火)4:30起床。支度を整え6:30出発。周囲はまだ暗い。尾根にとりつく急斜面を一息にあがると、少しずつ明るくなり視界が開けてくる。斜面を上がりきったところからは比較的ゆるやかな尾根状がつづく。雪は降っているが視界は50mほどはある。標高650mから上は木々もまばらとなり風が強くなる。

12:00。標高1200mの小ピークに到達。地形図が役に立つのはここまでであった。ここから先は地形図には表れないやせ細った稜線。切り立った岩場。細かいアップダウンの繰り返し。1200mにしては異様に風が強い。さすが利尻。ここからが本番である。ハーネス・ギアを装着し先にすすむ。1300m小ピークの先、切り立った下りとなる。ここは灌木を使ってのクライムダウン。

さらに進むと稜線が入り組んだ複雑な地形となる。飯澤氏が先行しルートを観察。懸垂で右先の稜線にとりつくものと思われるが、視界が悪くはっきりと見えない。時間は14:30を回っていたため、今日はここで行動終了と決定。風が強く、寒い。雪庇の裏側に雪洞を掘ろうと試みるがほどなく灌木につきあたる。やむなく半雪洞としテントを張り、逃げ込むようにして中へ。さすがに利尻。厳しいね、と話をしながら眠りにつく。夜は吹き溜まる雪でテントが押しつぶされそうになり、3時間に1度の除雪を余儀なくされた。

▲キノコ雪の乗った細い稜線。スコップで堀りながら前進
1月3日(水)視界が開けるのを待ち7:30行動開始。懸垂下降1回。その後灌木を使ってのクライムダウンで最低コルに出る。最低コルからは急な雪壁の登り。さらに幅1mもない細い稜線を慎重に進む。大きなキノコ雪の稜線などは片手にアックス、もう片手にスコップという経験したことのないスタイルで進む。


▲ナイフリッジに乗り込む
ナイフリッジと急な雪壁登攀を繰り返し、15:30大槍基部と思しき雪壁につく。ここを今夜の寝床と決め雪洞を掘る。この日は完璧な雪洞ができた。雪洞内は温かくこの山行で最も快適な夜だった。濡れたウェアや寝袋を乾かしつつ眠りにつく。日に日に厳しさを増す山に、ため息が出る。しかし、天気予報は良い兆しであった。4日・5日にかけ晴れはしないが風が弱まる。なんとか5日のうちには山頂を越え下山したい。しかし、その希望的観測は裏切られることになる。
▲急な雪壁登り。リッジ・雪壁の繰り返し

▲雪壁には十分な雪がありしっかりと雪洞が掘れた
1月4日(木)7:00行動開始。ハーネス・ギアが凍り付き準備になにかと時間がかかる。手袋の操作性の大切さが身に染みる。大槍は右のルンゼ状からとりつく。支点がとれず20mほどのランナウトを強いられる。やはり精神力が問われる。ルンゼを上がると急な雪壁のトラバース。時折視界が開ける。このあたりから仙法志陵が視界に入るようになる。屹立したローソク岩の向こうに、ほんの10秒ほど日の光がともされた。我々にとっての初日の出であった。

厳冬期利尻南陵①
厳冬期利尻南陵③
  

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