厳冬期 利尻南陵③


▲大槍基部から取りつく
20mほどランナウト
1月4日(木)10:00 大槍を巻くとそこはP2とのコルとなる。P2の登りも良くない。雪庇がどちらに出ているかわかりにくく、緊張を強いられる。P2ピークからはP1、そしてバットレスの威容が間近に迫る。大きい。あれを登るのかと思うと覚悟が要る。いったん懸垂で降りてしまうと登り返しは困難である。バットレスを登りきらない限り生還する道はない。極端に悪くはならないというこの先の気象予報を信じるしかない。丈夫そうな灌木を掘り出し捨て縄とロープをセットする。

▲大槍を巻きP2へロープを伸ばす
40m、20mと2回の懸垂下降。方向を間違えると大変なことになるので、慎重にルートを見極める。ここでは飯澤氏の経験が生きる。コルの高度を想定しほぼピタリと想定した箇所に降り立った。下降ルートにはいくつかのフィックスロープも見えた。懸垂終了からも楽ではない。崩れる雪面をなんとかトラバースし、最後はスコップを駆使し雪庇を掘り稜線に立つ。

▲突然姿を表した大槍とP2に感動
稜線を少し下るとP1とのコルとなった。さらにロープを伸ばしP1へ向かう。雪壁を1ピッチ進んだところで、急に空が開けた。そそり立つ大槍とP2。日本とは思えないような光景に心が震える。この時ばかりはここまでの厳しさを忘れ力が湧く。今日中にバットレス基部に到達しておきたいので先を急ぐ。バットレス基部へはベルグラの張ったルンゼを上がる。このルンゼ登攀中に日没となる。先ほどの晴れ間が嘘のような冷たい風が体を凍らせる。やはり利尻。甘い顔は一瞬だけであった。ヘッドランプを点灯しバットレス基部の少し手前の雪壁を掘りテントスペースを確保テントに入ったのは19:00をまわっていた。

▲奇跡的な晴れ間に記念撮影
1月5日(金)8:00行動開始。手袋が凍り付き普段難なくできることに難儀する。バットレス基部は雪煙が舞い、瞼が凍り付く。1ピッチ目は簡単な雪稜。2ピッチ目チムニー状をじわじわとあがる。この日のうちにバットレスを抜け山頂に立ちたかったが、思い通りにさせてくれないのが利尻だ。ハイ松テラスにあがったときにはすでに14:00を回っていた。ヘッドライトでの行動を辞さず先に進むか、ハイ松テラスで半分宙に浮いたテントを張るか、迷ったが3ピッチ目にロープをフィックスし翌日早朝に出発することとしてテントを張る。ギア・ザック等をすべて確保し、セルフビレイをとってシュラフに潜り込んだ。
▲ハイ松テラスにて。ひとときの晴れ間。雲海に浮かぶ絶景

厳冬期利尻南陵②
厳冬期利尻南陵④

コメント